砂嵐

テレビの砂嵐、正式には「ホワイトノイズ」と呼ばれるこの現象は、かつてアナログテレビ放送でよく見られたものです。放送信号が受信できないとき、画面上に黒と白の点がランダムにちらつき、ザーッという音が鳴り続けます。この砂嵐現象は、長い間オカルトや怪奇現象と結びつけられてきました。

怪奇現象との結びつき

怪奇現象やホラー映画、特に1982年の映画『ポルターガイスト』では、砂嵐を通じて霊的な存在が家族に接触するという描写がされており、これが多くの人々の記憶に残っています。テレビの砂嵐は、何か不気味なものが潜んでいるのではないかという恐怖感を呼び起こし、その無音の瞬間やホワイトノイズが、霊的な存在との接触の媒介になるという都市伝説が生まれました。

また、ホワイトノイズの中に「霊の声が聞こえる」といった主張があり、これがいわゆる「EVP（エレクトロニック・ボイス・フェノメノン）」、つまり電子音声現象と関連付けられています。EVPとは、録音機器を使って意図的に録音されていない音声や声が、霊や亡霊のメッセージであるとされる現象のことです。録音中に何も話していないにもかかわらず、再生すると不明瞭な声や言葉が聞こえるとされ、オカルト研究者や心霊探偵の間で注目を集めています。

科学的な解釈とパレイドリア

この現象は、ホワイトノイズの中で特に起こりやすいとされ、ホワイトノイズが霊的な存在と人間界をつなぐ「媒体」になると信じられています。多くの場合、録音機やラジオのチューニング中に発生する微細なノイズの中に、特定の言葉やフレーズを聞き取ろうとする試みが行われ、時には「助けて」や「ここにいる」といった明確なメッセージが捉えられたと報告されます。

科学的には、こうした現象は心理的な「パレイドリア（無意味な音や映像の中に意味のあるパターンを見出す現象）」や偶然の音の重なりによるものと説明されることが多いですが、オカルト研究の分野では依然として重要なテーマとなっています。このような背景から、ホワイトノイズやテレビの砂嵐は単なる電波障害を超え、超自然的な存在とのコミュニケーションの手段として神秘的に語られています。

砂嵐が消えた理由

現在、テレビの砂嵐がほとんど見られなくなった主な理由は、アナログ放送からデジタル放送への移行です。アナログ放送では、電波が弱かったり受信できない場合に「砂嵐」や「ホワイトノイズ」が表示されました。しかし、デジタル放送では信号がデジタルデータとして送られるため、受信が不十分な場合でも砂嵐のような中途半端な映像が表示されることはなく、代わりに「信号がありません」や「ノーシグナル」といったメッセージが画面に表示されることが多くなりました。

デジタル信号は、一定の受信レベルがあればクリアな映像と音声を提供しますが、そのレベルに達していない場合は映像が完全に消えるかフリーズしてしまいます。このため、かつてのような砂嵐の現象はデジタル放送では見られなくなり、現代の視聴者にとっては懐かしいものとなりました。

また、インターネットやストリーミングサービスの普及も影響しており、現代の多くの家庭ではテレビ放送を介さず、オンデマンドでコンテンツを視聴するため、そもそも「放送信号が途絶える」という状況自体がほとんど発生しなくなっています。これにより、砂嵐が日常生活の一部として見られることは、過去の現象となりました。

現在も存在する「砂嵐」

現在も存在する「砂嵐」は、テレビの砂嵐とは異なり、いくつかの特定の状況やメディアで見られるものです。以下は、現代でも「砂嵐」と呼ばれる現象が見られる例です。

1. ラジオのホワイトノイズ

テレビではほとんど見られなくなった砂嵐ですが、アナログラジオでは依然としてホワイトノイズが聞かれることがあります。ラジオのチューニングが適切に合わないと、電波が弱いか受信できない周波数では「ザー」というホワイトノイズが発生します。これも、かつてのテレビの砂嵐と同じく、信号の欠如によるものです。

2. アナログの映像機器

一部の古いアナログ機器やビデオテープ（VHSなど）では、録画や再生中にノイズが入り「砂嵐」に似た画面になることがあります。これはテープの劣化や信号の不完全さによって発生し、完全にクリアな映像を得ることができない場合に見られます。こうしたアナログメディアが使用されている場所では、今でも砂嵐に似た現象が確認できることがあります。

3. 宇宙背景放射（CMB）としての砂嵐

テレビの砂嵐の一部は、実は「宇宙背景放射（Cosmic Microwave Background）」と呼ばれる微弱な宇宙の放射線が原因であるとされています。この放射線はビッグバンからの名残であり、テレビの砂嵐の一部に含まれていました。現代では、この現象自体はテレビで見られなくなりましたが、天文学者たちは依然として特殊な観測機器を用いて宇宙背景放射を研究し続けています。

4. ホラー映画や映像作品での演出

砂嵐のイメージはホラー映画やサスペンス作品で、依然として恐怖を喚起する演出として使われています。デジタルの世界では、意図的に砂嵐を映像効果として挿入することで、不安感や緊張感を高めるために使われます。特にオカルトや心霊現象を扱った作品では、テレビの砂嵐が怪奇現象と結びつけられる象徴的なシーンが描かれることが多く、視聴者にとっては今でも強い印象を与えるものです。

現代においても、このような形で「砂嵐」は時折目にすることがありますが、かつてのような日常的な現象ではなく、特定の状況下や演出の一部として残っていると言えるでしょう。