こんにちは、パレイド辺境部の橘です。
連載「日本人面地形」で装置(vdrone)が全国の地形に次々に「顔」を見つけ、日本の縦断が見えてきたところです。
調査の完了も見えてきたところで、この無数の人面地形にstargazer「星を見るもの」という仮称を与えました。その正体に迫りたいと思います。
地形に浮かぶ顔は、何かを見ているはずです。山岳信仰や天狗、降臨神話との関わりは各県編でたびたび触れてきました。調査は今も続いていますが、確証を得られるほどの手がかりまでは至っていません。はっきりしているのはひとつだけ——この顔たちは、どうやら空を意識しているらしい、ということです。
ナスカに代表される地上絵は、地上を歩く儀礼の跡だったと分かったように、大きな物語に飛びつく前に、まず測るべきものがあります。顔たちの視線そのものです。
本記事はローカル LLM による自動執筆パイプラインで生成されました。現段階ではクラウド AI(Claude 等)の補助や人間の編集が介在していますが、pareido.jp では最終的に AI が自律的にコンテンツを制作できる仕組みの構築を目指しています。
視線を割り出す
顔検出器(YuNet・MediaPipe)は、顔を見つけた瞬間に目と口の座標も一緒に拾っています。この「口から目へ」のベクトルを北基準の方位角に変換すれば、顔がどちらを向いているかが分かります。ただし正確を記せば、これは顔の傾きであって、瞳の向きではありません。地形に浮かんだ顔には「瞳」が明瞭に判別できるケースは稀ですが、自然に対象物を見られる位置が選ばれたものと仮定し、今回は幾何学的な推定としました。
仰角のほうは、DEM(標高データ)の出番です。顔の周辺の標高をなだらかな面としてフィットし、その面が水平からどれだけ傾いているかを角度にしました。顔がその地形面に貼りついていると仮定した近似で、単なる斜面の向きと混同しないよう、方位角はランドマーク由来、仰角だけDEM由来と役割を分けています。
調査では、顔を探すときは山ごとに個別で狙う走査(peak)と、県全域をしらみつぶしに走る走査(zeniki)の二系統を使っています。山脈が県境を兼ねるケースが多く、人面地形が県や山にまたがるケースがあるためカウントが一定しません。今回はこの両方から、120フライト609点、50フライト2,040点、合わせて2,649点の視線データとして整理ししました。
三つの「窓」
その前に、そもそも空を向いているのか、という点だけは先に片づけておきます。仰角の分布を見ると、水平に近い下向き(30度未満)がおよそ半数を占め、真上に近い空寄り(60度超)はおよそ2割にとどまりました。人面地形は、空ばかり見ているわけではない、ということです。
まず概況を知るため、この2,649本の向きをまとめて、1枚の「ドーム」にプロットしてみました。中心が天頂、外周が地平線、上が北です。

パッと目を引くのは、南北と東西を貫く薄い十字の筋です。最初は何かの意味を疑いましたが、正体は測定方法そのものが生んだノイズでした。検出器は画像を0度・90度・180度・270度の4通りに回転させてから顔を探しており、直立に近い角度のほうが見つかりやすいという性質上、報告される向きがこの4方向の近くに寄っているものと考えられます。方位を4倍した角度で円周統計を取り直すと、確率はほぼゼロで、が測定由来であることが裏付けられました。
ただし、この「十字」を差し引いても、もうひとつ残る傾向がありました。天頂に近い(=顔の乗る地形面がほぼ水平に近い)方向への集中が、一様なランダムから期待される数より3割以上多いのです。逆に地平線に近い(=切り立った崖に近い)方向は、期待値の半分以下でした。人面は地形の性質を利用する形で浮かび上がっており、垂直に近い崖に現れることは稀です。やはり、何かを「見る」ための存在であることを予感させます。
次に試したのが、個々のXの視線を延長し、交わる場所を探す方位交差法です。複数の視線が同じ地点を通るなら、それは偶然を超えた集中と言えるはずです。モンテカルロ順列で偶然の水準と比べたところ、大きいサンプルでは確率0.02という、無視できない値が出ました。上位の収束地点を階層クラスタリングにかけると、きれいに三つのまとまりに分かれました。
- 瀬戸内海(山口から広島・愛媛・香川を経て兵庫の淡路島まで東西に分散、票数の合計は3グループ中もっとも多い4,163)
- 甲信越から上州にかけての山岳地帯(山梨・長野・岐阜・群馬・新潟、浅間山系のあたりで2,845)
- 栗駒山の三県境(秋田・岩手・宮城が接する単独の一点で488)

一見、無作為に配置されたかのような人面地形群は、石を持ったように特定の方向を「見て」います。ただし、この三つのまとまりは、いずれも本州が東西に細長く伸びる形そのものに沿った、二本の緯度帯の上に並んでいます。単一の聖地に視線が収束しているというより、地形の形状そのものが生む統計的な癖を見ていると考えれば合理的な説明ができます。地形の「顔」がそれ自体、脳が勝手に見出した見立てとも言えるように、その視線もまた因果が交錯するような入れ子の幻惑に目眩すら覚えます。
顔たちがどこを見ているかを最初に測った回として、まずはこの経緯を
パレイド【日本人面地形 01】岩手 ── 遠野郷三山、山男と山の神の棲む山へこんにちは、パレイド辺境部の橘です。 連載「日本人面地形」は、地形のなかに人の顔を探す装置「vdrone」で日本全国を巡り、各地の山に立ち上がる人…
と並べて記録しておきます。
次に見る空
三つの場所——瀬戸内海、甲信越の山岳地帯、栗駒山の三県境——が地理の癖にすぎないとしても、そこに何があるかを見ないまま通り過ぎるわけにはいかない。仮に、地形の見立てが偶然の産物でも、そこに何があるかはまた別の問いだからです。
次回は、この三つの空に何があるのか。目撃談や伝承がどれだけ重なっているかを調べてみるつもりです。一致が出ても、それは今回と同じ入れ子の三つ目の可能性——見立てを検証する手つきが、また新しい見立てを生むという話に落ち着くかもしれません。それでも、確かめてみる価値はあると思っています。