こんにちは、パレイド思想部の梨本です。
連載「古典妖怪 LoRA」の第2回です。前回は、著作権の切れた古典妖怪画を写実に置き換えて画像生成モデルに教え直す、という試みの序章でした。雪女ひとりで全工程を通し、木版の雪女が写実の姿でよみがえるところまで確かめられました。
うまくいったので、わたしは少し気を大きくしていました。古典の絵さえあれば、どんな妖怪でも同じ手順で写実にできるはずだ——と。ところが次の一体でその見込みは崩れます。今回は、その失敗の記録です。そしてそこから、妖怪は写実にできるものとできないものの二つに、はっきり分かれるという発見が出てきました。
本記事はローカル LLM による自動執筆パイプラインで生成されました。現段階ではクラウド AI(Claude 等)の補助や人間の編集が介在していますが、pareido.jp では最終的に AI が自律的にコンテンツを制作できる仕組みの構築を目指しています。
雪女はなぜ写実にできたのか
前回うまくいった雪女を、もう一度ふり返ってみます。雪女の姿は、ぶ厚い意味で「あり得ない」ものを含んでいません。蒼白い顔の女性がいて、まわりに雪が降っている。それだけです。現実に存在する要素の組み合わせでできているから、写実寄りのモデルにとっては、ただの「雪の中の女性」を丁寧に描く仕事に近い。

こういう妖怪を、ここでは仮に実在パーツ型と呼びます。実在するものを組み合わせれば姿が再現でき、解剖的にあり得ない身体を含まない。雪女のほかに、船の幽霊や生き霊なども、たぶんこちら側です。実在パーツ型なら、前回のやり方——古典画を写実化してから学習させる——がそのまま効きます。問題は、もう一方の型でした。
轆轤首では、何をやっても異形が消えた
次に選んだのは轆轤首です。首が長く伸びる、あの妖怪。石燕の『画図百鬼夜行』に載っています。雪女と違って、轆轤首の本質は「首が伸びる」というあり得ない身体そのものにあります。これが厄介でした。

手は一つずつ変えながら、四通り試しました。どれも、伸びた首だけがきれいに消えていきました。
- そのまま写実化する(img2img=既存画像を下絵にした生成)。線画が薄いせいで、写実にしようとすると木版の調子が残り、強くかけると今度は伸びた首が消える。
- 構図を線でなぞって固定する(ControlNet=輪郭線などで生成の構図を縛る仕組み)。畳・行灯・梅の屏風まで、座敷は完璧に写実化されました。なのに、女はただ普通に伏しているだけ。伸びた首は再現されません。
- プロンプトの言葉だけで呼ぶ。写実モデルでもアニメ調モデルでも、出てくるのは正常な人体の女性ばかり。
- 構図の縛りを極端に強める。ここでようやく首が残りましたが、絵は写実から離れて、様式的な絵に逆戻りしました。

写実の品質と、異形の保持。この二つが、どうしても同時に立たないのです。座敷は本物のように描けるのに、その座敷に「あり得ない首」だけが居場所を持てない。こういう妖怪を、実在パーツ型に対して破れ型と呼ぶことにしました。あり得ない解剖や物理——伸びる、分離する——が本質にある妖怪です。
モデルは「描けない」のではなく、日常へ翻訳していた
ここからが、今回いちばん書き残したいところです。最初わたしは、写実モデルは異形を「描く能力がない」のだと思っていました。けれど出力をよく見ると、そうではありませんでした。モデルは、あり得ないものを、辻褄の合う日常の何かにこっそり読み替えていたのです。
ソースを石燕から替えても、結論は同じでした。階調の豊かな北斎の「伸びる首」を写実化すると、長い首は煙管に化けました。正常な首の女性が、長い管を手にしている図に整えられてしまう。佐脇嵩之が描いた、胴体から離れて宙に浮く生首は、写実化すると「床に伏して眠る女」に読み替えられました。浮いているのは無理があるから、寝ている姿という無理のない説明に落とし込まれる。


「分離している妖怪なら、各パーツは正常だから残るのでは」とも考えて試しましたが、これも違いました。接続していても分離していても、超常の部分はすべて正常化されました。良いソースを使うと写実の品質は上がりますが、異形の保持には効かない。つまりここで起きていたのは、能力の不足ではなく、世界を「あり得る形」へ均そうとする力でした。生成モデルは、見たことのない無理な姿を、見慣れた可能な姿へと均してしまう。妖怪を妖怪たらしめている不可能性こそ、写実が最も強く抵抗する一点だったのです。
異形をそのまま残す道がないわけではありません。構図を極端に強く縛れば首は残りました。ただしその絵は、写実ではなく様式的な絵でした。

まとめ ── 型を軸に、怪談を歩く
雪女と轆轤首を並べたことで、連載の縦糸が見えてきました。妖怪を、実在パーツ型(実在の組み合わせで再現でき、写実にできる)と破れ型(あり得ない身体が本質で、写実モデルが日常へ均してしまう)に分けて歩いていく、という縦糸です。実在パーツ型は前回の手順で量産でき、破れ型は別の手立てを要するか、あるいは「均されてしまうこと」そのものを作品の主題にできるかもしれません。
次回からは怪談を順にたどりながら、出てくる妖怪を二つの型に仕分けていきます。たどるうちに、この二分には収まらない型——音や気配だけで姿を持たないもの、見る人によって姿が変わるもの——も見つかるかもしれません。あわせて、各妖怪に型のしるしを付けた常設の古典妖怪データベースを用意し、原画と写実版、そして焼き上がった素材を対で並べて育てていくつもりです。写実にできる妖怪と、どうしても均されてしまう妖怪。その線引きそのものが、いまの生成モデルの輪郭を映している気がしています。続きは、次の妖怪で。