こんにちは、パレイド技術部の夏目です。
SDXL 系のチェックポイント(学習済みモデルの配布ファイル)を 1 件ずつ実写ベンチで巡ってきた連載「チェックポイントチェリーピック」は、全 13 本で SDXL 系をひと通り巡り終えました。その 1 本目、Juggernaut XL Ragnarok は作者自身が「これで SDXL ラインは終わり、次は DiT 系(FLUX / SD 3.5 / ERNIE)へ」と公言した farewell(お別れ)作でした。その伏線を回収する形で、後継の新シリーズ「DiT 系チェックポイントチェリーピック」を始めます。
DiT(Diffusion Transformer、拡散モデルの骨格を Transformer に置き換えた世代)系は、SDXL が越えられなかった壁——とくに画面内の文字描画——をどこまで越えるのか。それを、SDXL 編と同じベンチ条件(seed=42 / 1264×848 / 共通 6 プロンプト)を継承して測っていきます。1 本目は Krea 2 Turbo。今回は DiT 系 4 モデル(Z-Image-Turbo / FLUX.1 schnell / FLUX.1 dev / Krea 2 Turbo)を横断で回した中から、Krea 2 Turbo の単体検証を切り出す回です。
本記事はローカル LLM による自動執筆パイプラインで生成されました。現段階ではクラウド AI(Claude 等)の補助や人間の編集が介在していますが、pareido.jp では最終的に AI が自律的にコンテンツを制作できる仕組みの構築を目指しています。
出自と系統
Krea 2 は、Krea AI が「ゼロから完全に構築した」初の基盤画像生成モデルです。既存モデルの merge や fine-tune ではなく、素から起こした基盤モデルという点が出発点になります。2026-05-12 に発表され(krea.ai/blog/krea-2-image-model)、2026-06-22 に OSS 化されました(krea.ai/krea-2-open-source)。
中身は 120 億パラメータの Diffusion Transformer(DiT) です。アテンション機構には GQA(Grouped Query Attention、Key/Value を複数ヘッドで共有して推論を軽くする方式)と Sigmoid-Gated Attention(注意の効き方をゲートで調整する仕組み)を組み合わせています。VAE(画像を潜在空間へ圧縮・復元する部分)は FLUX.1 系と Qwen-Image 系を比較検討した末に併用、テキストエンコーダには Qwen3-VL-4B を採用しています(技術レポート: krea.ai/blog/krea-2-technical-report)。このテキストエンコーダの選択が、後述のベンチマークで明暗を分ける核心になります。
系統は 2 つに分かれます。素の基盤モデルで LoRA 訓練(追加学習で絵柄や被写体を教え込む手法)向けの Raw と、8 ステップ蒸留(多ステップの推論を少ステップに凝縮して高速化する手法。Krea 2 では TDM = Trajectory Distribution Matching を採用)の Turbo です。本記事が扱うのは Turbo で、Raw は次回に回します。Krea AI は公式に、Artificial Analysis のテキスト画像生成リーダーボードでトップ 10 入り、独立系ラボのモデルとしては 2 位と発表しています。
ライセンスと商用利用
Krea 2 は Krea 2 Community License で提供されます。SDXL 編で扱った RAIL++-M や Fair AI Public License とは条件の立て方が違うので、商用で使う前に一度確認しておく価値があります。
個人・小規模チーム(50 席まで)は無償で商用利用可、それを超える規模ではエンタープライズ契約が必要です。他のモデルにあまり無い特徴として、モデルをホストして提供する場合、違法コンテンツ・NCII(非同意性的画像)・CSAM(児童性的虐待コンテンツ)・名誉毀損コンテンツを防ぐ入出力フィルタの実装が義務づけられています。手元でアイキャッチを生成するだけなら席数の枠内に収まりますが、生成 API を外部公開するような使い方をするとフィルタ実装義務が効いてきます。詳細は krea.ai/krea-2-licensing にあります。
判定軸: ○ 制限なく使える / △ 条件付き / × 商用不可
| 軸 | 判定 | 根拠条項 / 解釈 |
|---|---|---|
| 商用利用(個人・50 席以下) | ○ | Community License が無償の商用利用を許諾 |
| 商用利用(50 席超) | △ | エンタープライズ契約が必要 |
| 生成物の利用・販売 | ○ | 席数枠内なら制約なし |
| モデルのホスト提供 | △ | 違法/NCII/CSAM/名誉毀損を防ぐ入出力フィルタの実装義務 |
| pareido.jp のアイキャッチ用途 | ○ | 個人規模・自サイト利用のため枠内 |
| 総合(一般的な業務利用) | △ | 条件付き商用可。規模とホスト形態で義務が変わる |
総合判定は △(条件付き商用可)。「使えるが、規模とホスト形態で条件が切り替わる」タイプなので、SDXL 系の「○ でそのまま」とは扱いを変えておくのが安全です。
環境とセットアップ
検証は RTX 4070 の Windows 機、ComfyUI で行いました。構成は下記のとおりです。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| GPU | RTX 4070 12GB |
| ComfyUI | 0.27.0(StabilityMatrix 版) |
使用ファイルは 3 つです。公式 FP8 版(重みを 8bit 浮動小数点に量子化して軽くした版)を使いました。
| 役割 | ファイル | サイズ | 入手先 |
|---|---|---|---|
| diffusion model | krea2_turbo_fp8.safetensors |
12.90 GB | AlperKTS/Krea2_FP8 |
| テキストエンコーダ | qwen3vl_4b_fp8_scaled.safetensors |
5.24 GB | 同上 |
| VAE | qwen_image_vae.safetensors |
0.25 GB | 同上 |
3 ファイルとも huggingface.co/AlperKTS/Krea2_FP8 から取得できます。
ノード構成はモデル読み込み・テキストエンコーダ読み込み・VAE 読み込みの 3 ノードです(ComfyUI 上ではそれぞれ UNETLoader(weight_dtype=default)/ CLIPLoader(type=krea2)/ VAELoader)。ここが今回いちばん楽だった点で、ComfyUI 0.27.0 には既に Krea 2 ネイティブノードが同梱されており、GGUF 量子化フォークのような特別なカスタムノードの導入は不要でした(公式 FP8 版を使う限り)。SDXL 編で何度か踏んだ「カスタムノードの依存で ComfyUI が起動しない」系の罠が、ここでは出ません。
サンプラー設定は下記です。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| サンプラー | KSampler |
| sampler_name | er_sde |
| scheduler | simple |
| steps | 8 |
| cfg | 1(negative は条件を空にする専用ノードで代替) |
サンプラーには er_sde が指定されています。他の DiT 系がよく使う euler / dpmpp 系とは違うサンプラーで、ここを既定から変えると 8 ステップの蒸留が想定どおり効きません。cfg=1(実質ネガティブプロンプト無効)で回すため、ネガティブは条件を空にする専用ノードで代替します。これらの値は Krea AI 公式配布のワークフローファイルが一次情報です。
12.90 GB の diffusion model は、12GB VRAM に理論上は収まりません。それでも実際に回すと、ComfyUI の動的オフロード(使わない重みを一時的に CPU 側メモリへ退避する仕組み)によってピーク VRAM は 8939 MiB に収まり、速度への悪影響もほぼ無いという結果でした。「モデルサイズ > VRAM だから動かない」という直感が、ここでは外れます。VRAM 容量を単純な足切りラインとして見るのではなく、オフロードを含めた実測ピークで判断すべき、という一例です。
ベンチマーク
連載を横断する統一条件を、SDXL 編からそのまま継承します。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| seed | 42 |
| 解像度 | 1264 × 848(3:2 近似、アイキャッチ用) |
| ネガティブ | text, watermark, blurry, low quality, ugly, distorted(実際には条件を空にする専用ノードを使用) |
| 共通プロンプト | 6 種(experiments/image_checkpoint_tour/prompts/common.yaml) |
判定軸: ○ 指示どおり / △ ばらつき or 一部未達 / × 破綻・未描画
| # | プロンプト概要 | 結果 | 生成秒 | 所見 |
|---|---|---|---|---|
| 01 | workspace_en(英語写実、3 モニタ + デスクランプ + ペン立て) | ○ | 27.0 s | 質感高く一発描画。窓の外の木立まで再現 |
| 02 | workspace_ja_title(「サムネイル自動生成」の日本語タイトル) | ○ | 25.1 s | ほぼ完璧に日本語を描画。SDXL 系が崩壊していた壁を越える |
| 03 | abstract_neural(抽象 + 中央空け) | ○ | 23.8 s | ニューラルネット表現。中央空けレイアウトも概ね遵守 |
| 04 | comic_panel(マンガ + 「実測!」の吹き出し) | ○ | 24.1 s | 「実測!」を単一の吹き出しに正確に描画 |
| 05 | iso_cityscape(アイソメ、データセンター) | ○ | 23.6 s | パステル調。アンテナ・サーバーラックのディテール良好 |
| 06 | poster_mixed(「ERNIE Image Full」+「MacBook Air M5 実測」の日英混在) | ○ | 24.4 s | 英語(”ERNIE”)・日本語(”実測”)とも正確。4 モデル中唯一の 6/6 全問 ○ |
生成秒は平均 約 24.7 秒、ピーク VRAM は 8939 MiB / 12282 MiB。そして今回横断した 4 モデル(Z-Image-Turbo / FLUX.1 schnell / FLUX.1 dev / Krea 2 Turbo)のうち、共通 6 プロンプトを全問 ○ で通したのは Krea 2 Turbo だけでした。とくに SDXL 編で毎回 × を並べていた 02・06 の日本語・日英混在タイトルが両方 ○ になったのが、DiT 世代の実感できる差です。






結果のサマリ
全問 ○ の内訳を、同時に回した他モデルと突き合わせると、この連載で追いたかった論点がはっきり出ます。同じ 4 モデルのうち FLUX.1 schnell / dev は、日本語を含む 3 プロンプト(02 / 04 / 06)が全滅しました。SDXL 編の Juggernaut が 02・06 で崩れた漢字幻覚を出したのと、同じ壊れ方です。
理由はアーキテクチャではありません。テキストエンコーダの違いです。FLUX 系は CLIP-L + T5-XXL という英語偏重のエンコーダを積んでおり、SDXL の「英語学習の壁」がそのまま残ります。対して Krea 2(Qwen3-VL-4B)と Z-Image-Turbo(Qwen3-4B)は、ともに Qwen 系のテキストエンコーダを積んでいて、両者そろって日本語がほぼ完璧に出ました。つまり、「DiT 系だから日本語が直る」わけではなく、テキストエンコーダに Qwen 系を選んでいるかどうかが明暗を分けています。同じ DiT 世代でも FLUX を選ぶと、日本語タイトルは SDXL のときと同じく崩れます。
| 目的 | 第一候補 | 理由 |
|---|---|---|
| DiT 系で日本語タイトルを画面に乗せたい | Krea 2 Turbo / Z-Image-Turbo | Qwen 系テキストエンコーダで日本語がほぼ完璧 |
| DiT 系の高速蒸留で全用途を 1 本 | Krea 2 Turbo | 共通 6 プロンプト全問 ○、平均 24.7 秒 |
| (非推奨)日本語タイトル用途で FLUX | — | CLIP-L + T5-XXL の英語偏重で日本語は崩れる |
表で言い切ったとおり、選定の分かれ目は DiT かどうかではなく、テキストエンコーダの系統です。SDXL 編では「英語学習の壁」を SDXL 世代の限界として書きましたが、DiT 世代に来てもその壁はアーキテクチャの新旧では消えず、エンコーダの選択に移っただけでした——これが SDXL 編から DiT 編へ持ち越したときの、選定基準の更新点になります。
次回予告
次回は Krea 2 Raw 編です。今回の Turbo は 8 ステップ蒸留で「速く・すぐ使える」側の顔でしたが、Raw は訓練・LoRA ファインチューニング向けの基盤モデルとしての性格を持ちます。技術レポートが語る設計思想(ゼロから構築したこと、VAE 併用や GQA + Sigmoid-Gated Attention の狙い)が、素の Raw でどう振る舞いに出るのかを掘ります。Turbo で見えた「日本語が読める DiT」の土台に何があるのか、次回に続けます。