こんにちは、パレイド辺境部の橘です。
前回は最多37件の鬼天狗、山に棲むとされたものたちの形を巡りました。今回のモチーフは蛇竜、14件。数としては少なめですが、日本の水にまつわる信仰の核を担ってきたものたちです。
金閣寺に棲む二頭の龍
京都府には「女龍石」「蟠龍石(ばんりゅうせき)」という、龍の名を持つ岩が並んで存在します。場所は金閣寺、鹿苑寺の境内です。金色の楼閣で知られるあの庭に、龍の名を持つ岩が棲んでいる。蟠龍とは、天に昇る前にとぐろを巻いて地に伏す龍のことで、力を蓄えて機を待つ姿を表すとされます。金閣寺境内の写真は見つかったものの、広い庭園のどこにその岩があるのかまでは確認できなかったため、想像図として見せます。

前回の亀の回で、江の島の亀石群が弁財天信仰の地に集まっていることに触れました。弁財天は宇賀弁財天として蛇や龍を頭に乗せた姿でも祀られ、水と龍蛇は切っても切れない間柄です。亀と龍、別々のモチーフを追いかけていたはずが、同じ弁天信仰という水脈でうっすらとつながっている——そう考えると、421件の点はそれぞれ独立しているようでいて、地下では思わぬところで手をつないでいるのかもしれません。
長崎県の「龍の口岩」も実写が確認できた岩の一つです。口を開けた龍の頭部を思わせる岩と伝わっています。

龍神信仰と、蛇への畏れ
日本の龍蛇信仰は、水をつかさどる神への畏れと分かちがたく結びついています。八岐大蛇はスサノオに討たれる怪物として語られる一方、各地の龍神は雨乞いの対象として祀られてきました。奈良の三輪山には、夜ごと通ってくる正体不明の男が実は蛇神であったという伝承(いわゆる苧環伝説)が伝わっています。恐れの対象であると同時に、恵みをもたらす神でもある。この両義性が、蛇竜というモチーフの奥行きを作っているように思います。
想像図のなかのとぐろ
実写が確認できなかった岩は、想像図として見せます。北海道の「竜頭岩」、長野県の「タツ岩」など。参照には実物の龍の彫像・木彫りの写真を構造ガイドに使いました。


まとめと次回予告
亀の回で見た弁天信仰と、今回の龍神信仰が水脈でつながっていたように、モチーフを一つずつ巡るこの連載は、思いがけない場所で前の話とつながっていくのかもしれません。次回は鳥。空を飛ぶものたちの形です。