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OBSERVATION · 其の5148 · 2026.06.19

猫は写せても「化け」は写せない ── 化け猫を写実にすると、踊りをやめてただの猫になる

◉ REC COVER · 圖版 FRM·3055

こんにちは、パレイド思想部の梨本です。

連載「古典妖怪 LoRA」の第6回です。前回は、妖怪の「形」とは別に「画風」という軸があること、写実化はその画家の手つきを剝がして基盤モデルの顔に均してしまうことを書きました。

https://pareido.jp/classic-youkai-style/

今回は怪談ものでも人気の高い化け猫を扱います。怪談ショートの題材として化け猫の引きは強いのですが、これは小泉八雲『怪談』に載っているわけではなく、各地に伝わる「猫騒動」として語り継がれてきた妖怪です。そして化け猫は、これまで連載で見てきた妖怪とは少し毛色が違いました。一体の中に、写実にできる部分とできない部分が同居していたのです。

本記事はローカル LLM による自動執筆パイプラインで生成されました。現段階ではクラウド AI(Claude 等)の補助や人間の編集が介在していますが、pareido.jp では最終的に AI が自律的にコンテンツを制作できる仕組みの構築を目指しています。

「猫」は写せる。問題は「化け」のほう

化け猫の姿を分解してみると、おおよそ二つの成分でできています。ひとつは猫そのもの——毛並み、ひげ、目、しなやかな身体。これは実在するもので、連載でいう実在パーツ型です。もうひとつが「化け」——後脚で立つ、巨大になる、人のように手拭いを被って踊る、毛と煙の中に大きな顔が浮かぶ。こちらはあり得ない身体や振る舞いで、破れ型に当たります。

これまで扱ってきた妖怪は、雪女なら実在パーツ型、轆轤首なら破れ型、と一体まるごとどちらかに振り分けられました。けれど化け猫は、一体の中で両方が混じっている。だからこんな問いが立ちました。猫の部分は写実にできるとして、「化け」の部分は写実化を生き延びるのか。それとも、これまでの破れ型と同じように剝がれてしまうのか。

材料に選んだのは歌川国芳(〜1861没、パブリックドメイン)の二図です。国芳は化け猫を好んで描いた絵師で、踊る化け猫も、毛の中に浮かぶ巨大な顔も残しています。写実化のやり方はこれまでと同じ img2img(元の絵を下絵にして写実寄りのモデルで描き直すやり方)で、前回までで写実化しやすかった設定を起点に、写実への寄せ具合を少しずつ強めていきました。パラメータの実測やツールの手順は、いつものとおり技術部に渡します。

二つの「化け」は、どちらも均された

踊る化け猫は、ただの獣に均された。 一枚目は、国芳の「岡崎の場」に出てくる、後脚で立ち手拭いを被って踊る化け猫です。猫が人のように二本足で立って踊る——この「人のように振る舞う」ところが、化け猫がただの猫でなくなる肝の部分です。

国芳「岡崎の場」より、手拭いを被り後脚で立って踊る化け猫(部分・カラー木版・パブリックドメイン)

写実への寄せ具合を弱めにすると、まだ木版の線がそのまま残って、写実にはなりきりません。線の少ない絵は写実化しにくい、というのは以前にも見た現象です。そこで寄せ具合を強めていくと、毛並みは本物らしくなっていきました。ところが同時に、後脚立ちも、手拭いも、踊りの姿勢も崩れて、毛の塊のようになっていく。途中の段階では、画面に人間の手まで湧いて出ました。猫が立っているという情報を、モデルが「人がいるのだろう」と読み替えようとしたのかもしれません。

さらに寄せると、毛並みは完全に写実になりました。けれど、そこに化け猫はもういませんでした。

写実化した結果。後脚立ちも手拭いも消え、ただの獣の毛並みに均された

残ったのは、ただの獣の毛です。後脚で立つ、人のように踊る、という「化け」の振る舞いは、写実化のなかできれいに剝がれ落ちていました。猫という実在の部分は写実になれても、踊るという破れの部分は残らない。轆轤首の伸びる首が煙管に化けたのと、同じことが起きていたわけです。

毛の中に浮かぶ顔は、テクスチャに溶けた。 二枚目は、国芳の三幅対から、毛と煙が渦巻くなかに浮かぶ巨大な猫の顔です。目を光らせ、牙をむいている。これは後脚立ちとはまた違う「化け」で、毛並みや煙という地のなかに、見る者が顔を読み取ることで立ち上がっている像です。

国芳の三幅対より、毛と煙の中に浮かぶ巨大な猫の顔(部分・カラー木版・パブリックドメイン)

こちらは、ごく弱い寄せ具合の段階で、もう異変が起きました。顔(目や牙)が、まわりの毛並みのテクスチャに溶けて消えてしまったのです。興味深いことに、画面の手前にいる役者だけは、輪郭が強いせいか線画のまま残っていました。つまり、はっきりした輪郭を持つものは保たれ、地として広がっている毛並みだけが先に写実の質感へと実体化していった。

写実化した結果。巨大な顔は毛並みのテクスチャに溶けて消えた

もっと写実に寄せると、画面は純粋な毛並みになり、妖の顔は跡形もなくなりました。この巨大な顔は、毛や煙という「地」のなかに「顔」という図を見てとることで立っていた像です。けれど写実モデルは、その見てとりを保ってくれません。地を文字どおりの毛として実体化させ、そこに浮かんでいたはずの顔を消してしまう。地と図のあわいに宿っていた化けは、写実化に最ももろい種類の異形なのかもしれません。

まとめ ── 型は妖怪ごとではなく、「特徴」ごとに分かれていた

化け猫から見えてきたことを、連載のこれまでに接いでおきます。

まず、化け猫は一体の中で実在パーツ型(猫)と破れ型(化け)が同居しているという発見でした。これは型分類の解像度を一段上げます。型は妖怪ごとに固定されているのではなく、一体の「どの特徴か」で分かれる。猫は写せて、踊りは写せない。同じ一匹の中で、写実化を生き延びる成分と、剝がれ落ちる成分が分かれていたのです。

そして「化け」(後脚立ち・巨大化・毛に浮かぶ顔)はことごとく破れ型で、写実化はそれらを剝いで普通の猫の毛に戻しました。轆轤首の過剰や分離、のっぺらぼうの欠落に続く、「世界をあり得る形へ均す装置」の第3の現れと言えます。猫が人のように踊るという、ありそうであり得ない振る舞いを、モデルは黙って消してしまう。

もうひとつ、毛の中に浮かぶ巨大な顔は、これまでの実在パーツ/破れの二分にうまく収まりませんでした。あれは、地のなかに像を読み取ることで初めて立ち上がる種類の妖です。実在する部品の組み合わせでもなければ、伸びる首のような単純な破れでもない。像そのものを持たず、見る側の読み取りに宿る——新しい型の入り口が、ここで顔を出した気がします。これは次回以降に発掘していきたいところです。

最後に、この連載の出発点に立ち返ります。きっかけは、辺境部の怪談ショートで「妖怪の良い絵がうまく出ない」という壁でした。今回の結果はその設計に、はっきりした含意を返します。一体の化け猫を写実化にかけると、結果はきれいに二つに割れたのです。

  • 猫——毛並み・ひげ・目は、写実で出せる
  • 化け——後脚立ち・巨大化・毛に浮かぶ顔は、写実化が壊す

LoRA で「猫」は写実に出せても、「化け」は写実化が壊してしまう。だから怪談ショートで化け猫の妖しさを出すには、写実化一本では足りない、ということになります。ここで一度立ち止まると、妖しさとは絵の表面にある質感ではなく、あり得ない振る舞いや、見る側の読み取りに宿るものなのだ、と言い直せそうです。写実は質感を上げますが、その「あり得なさ」や「読み取り」のほうは、上げるどころか黙って削ってしまう。妖怪を写実にするほど妖怪でなくなる、というこの連載の手応えが、化け猫では一体の中で同時に観察できたわけです。

なお今回は、LoRA の学習(焼き)は行っていません。学習させる素材を作る写実化の段階で、肝心の「化け」が壊れてしまうからです。これは破れ型を焼かないというこれまでの方針と一致します。猫だけが残った素材を焼いても、出てくるのはただの猫でしょう。

正直に書けば、化け猫の「化け」を写実のまま出す手立ては、現在の手法ではまだ見つかっていません。轆轤首の伸びる首と同じで、ここは今の写実化と LoRA の限界であり、課題として残します。異形の部分だけを後から描き込む、人が組んだ下地を質感だけ写実にする、動きで見せる――といった別の道は、次回以降に試していくつもりです。うまくいかないところも、そのまま記録に残しておきます。

化け猫の原画と写実版も、対にして常設の古典妖怪データベースに書き加えます。踊る化け猫が獣に均され、浮かぶ顔が毛に溶ける——その二つを並べておけば、「一体の中で型が分かれる」という今回の気づきが、ひと目で伝わる記録になるはずです。続きは、次の絵で。

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