地形の顔2,649本の視線を統計にかけて見つかった「三つの窓」の下調べ、前回は瀬戸内海側を歩きました。今回は二番目に票数の多かった、甲信越から上州にかけての窓です。視線の集中を「ここの空を見ろ」という指し示しとして扱い、そこに何が伝わっているかを見に行くという立て付けは前回と同じで、これも結論ではなく下調べの記録です。窓は全部で三つあり、地理的にも性格的にもばらばらな三つが、それぞれ何を指しているのかを一つずつ確かめています。
窓の輪郭
甲信越・上州の窓は、山梨・長野・岐阜・群馬・新潟の5県にまたがる6地点で構成され、合計2,845票を集めています。最大得票は547票(山梨・北杜市寄り)、次点が511票(岐阜・長野県境)で、瀬戸内海のような海沿いの帯ではなく、標高の高い内陸の山岳地帯に固まって分布しているのが特徴です。前回同様、収束点は20km四方のグリッドへの投票で求めているので、以下の距離もそのグリッド解像度を踏まえて読んでもらえればと思います。
顔の傾き(azimuth)とDEMから求めた仰角(elevation)を組み合わせて視線を割り出している、という前提も前回と変わりません。瞳孔ではなく顔の傾きしか測れていない以上、ここでの一致は精密な到達点というより大まかな指し示しとして扱うのが妥当です。瀬戸内海の窓が海に開けた見晴らしの良さを共通項にしていたのに対し、こちらは標高そのものの高さと、地質的な特異さが共通項になっている点が対照的でした。
見つかったもの
窓の周辺で、UFOや空の怪異にまつわる記録を探しました。もっとも近かったのは甲府事件で、距離は33.5kmです。1975年2月23日、甲府市上町で小学生2名がUFOとその搭乗者に遭遇したとされる事件で、高知の介良事件と並んで日本三大UFO事件のひとつに数えられています。目撃者が子供だったこと、搭乗者との接触まで語られていることから、単なる発光体目撃を超えて長く語り継がれてきました。半世紀近く経った今も、当時の目撃者への取材記事が定期的に出てくるほど、記録の密度が濃い事件です。
朝日新聞「UFOに遭遇」の小学生 甲府事件から半世紀を前に沈黙を破る:朝日新聞1975年、1人の小学生が全国の注目を集めました。「宇宙人に遭遇し、肩ををたたかれた」。のちに「甲府事件」と呼ばれることになるこの出来事。小学2…withnews.jp
次に近かったのが皆神山で、距離は49.9km。長野市松代にある標高660mほどの小さな山ですが、1965年から70年にかけて起きた松代群発地震の震源地として知られ、日本で観測史上もっとも長く続いた地震群発として気象庁の記録に残っています。この山にはさらに、超古代に築かれた巨大なピラミッドで、宇宙船の基地だったとする説もあります。こうした説は少なくとも1980年代には書籍で紹介され、現在も山上の案内板やオカルト媒体を通じて語り継がれています。長野市立博物館も、皆神山が「UFO出現地」として人を集めていることを地域文化の一側面として紹介しています。
www.minakami-jinja.jp皆神神社www.minakami-jinja.jp www.city.nagano.nagano.jphttps://www.city.nagano.nagano.jp/museum/pdf/dayori/125.pdfwww.city.nagano.nagano.jp
webムー 世界の謎と不思議のニュース&考察コラム世界最大最古のピラミッド! 長野県「皆神山」ピラミッド|webムー 世界の謎と不思議のニュース&考察コラム列島各地に存在するピラミッドと超古代文明の謎を徹底ガイド!web-mu.jp
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窓の内陸側には天狗信仰の山(迦葉山・飯縄山)も見つかりましたが、これは前回書いた理由でカテゴリごと除外しています。有名な山にはほぼ自動的に天狗が祀られているため、識別力のある一致とは言えないからです。富士山麓もUFO目撃の多発地としてしばしば言及されますが、66.1kmとやや距離があり、参考にとどめました。
前回の瀬戸内海の窓では、厳島神社の龍燈までわずか3.8kmという、グリッド解像度からすればほぼ同一地点と言える近さでした。今回の33.5km・49.9kmはそれよりだいぶ緩く、グリッド1マス分から2マス分の距離があります。同じ手法・同じ基準で探しているのに窓ごとに一致の精度が違う、という事実自体も記録しておく価値があると思っています。厳しく見れば「近いと言えるかどうか怪しい」距離ですが、逆に言えば、探せば必ず何か見つかるほど甘い基準でもない、ということでもあります。
留保しておきたいこと
瀬戸内海の窓と同じ留保がここにも当てはまります。険しい内陸山岳地帯は、パレイドリアが検出されやすい場所であると同時に、地震観測点が置かれやすく、UFOや地底人といった伝説が生まれやすい土地でもあります。皆神山の地震と伝説が同じ場所に同居しているのも、山そのものの地質的な特異さ(群発地震を起こすほどの地下構造)が、両方を引き寄せているだけかもしれません。南極で隕石が見つかりやすいのが白い氷の上で目立つからであるように、ここでも「険しい特異な土地」という共通の原因が、視線の集中とUFO伝説の両方を生んでいる可能性は消えません。甲府事件についても、事件そのものが山岳地帯特有の地形と結びついているわけではありませんが、日本三大UFO事件の残る一つ(介良事件)も含めて、目撃地はいずれも山や高地に近い土地に集中しているという傾向自体は気になるところです。

それでも、甲府事件は日本三大UFO事件という広く知られた記録の中にすでにあったものです。皆神山も同様に、辺境部が以前から知っていた「辺境古典」の一つでした。前回書いた通り、この入れ子を断ち切るには、位置は固定したまま視線の方角だけを無作為に入れ替え、同じ近さの一致が偶然に起きる確率をモンテカルロ順列で試すという手立てがあります。地形の見晴らしや標高という条件をそのまま保った上で、方角だけの効果を取り出せる検定です。天狗のような汎用カテゴリには効きませんが、日付や座標が特定できる甲府事件や皆神山のような対象には、まだ試す価値が残っていると思っています。距離の近さだけを証拠に据えるのではなく、こうして淡々と記録を積んでおくことが、今の段階でできる誠実さです。
次回は、単独で残った栗駒山側の窓を下調べします。